全粒穀物とはふすまや胚乳を分けられず精製せずにある穀物のこと。ホールグレインとも言われます。小麦なら全粒粉、米なら玄米が全粒穀物として有名ですね。
テフは世界一小さな穀物で、その小ささから精製ができず全粒穀物として食べられています。アメリカでは『米国人のための食事ガイドライン(2015-2020年版)』で毎日最低90gの全粒穀物食品を摂取し、1日に食べる穀物の少なくとも半分以上を全粒穀物にすることを推奨しています。アメリカ以外にもイギリスなどのEU諸国、オーストラリア、カナダ、シンガポールなども全粒穀物の摂取を推奨。世界的に認められた食品であることは分かっていただけたかと思いますが、具体的にはどんな健康効果が期待できるのでしょうか?
食物繊維が腸内環境を整える
全粒穀物は精製されたものに比べて食物繊維が多いことで腸内環境改善を期待できます。不溶性食物繊維であるアラビノキシランが腸内で発酵し、腸内菌の餌になることで短鎖脂肪酸という物質が生まれることが分かっています。この短鎖脂肪酸は、満腹感や血糖値の上昇の抑制、血圧を下げたり、免疫機能に影響を与えたりしていることが分かってきています。2020年、日本の国立国際医療研究センターが全粒穀物の摂取頻度が高いほど高血圧になりにくいという研究結果を「Nutrients」で発表しました。2021年には「The Journal of Nutrition」で、全粒穀物の摂取は高血圧の抑制、太りにくい体を作り、血糖値の上昇を抑制すると書かれた論文が発表されています。食物繊維が消化速度を遅らせることで満腹感を生んでいるということもあり、食事の際に全粒穀物を併せて摂取することで体重管理に役立つ効果が期待できます。
ビタミンやフィトケミカル
体のエネルギー代謝を助けるビタミンB群、抗酸化作用を持つビタミンEやフィトケミカルを豊富に含んでいるため、動脈硬化予防だけでなくアンチエイジングなどにも役立つとされています。
様々な病気の根を断つには日頃の体調管理が大事
肥満、高血糖、高血圧は、心臓病、糖尿病、がん、感染症の死亡リスク増加など、あらゆる病気に繋がります。
2016年に発表された研究結果では、全粒穀物や全粒穀物を使った食品を頻繁に摂取している人は、心血管疾患などによる死亡リスクや総死亡率が下がり、1日90gの全粒穀物を摂取している人は糖尿病による死亡リスクが半分程度まで下がると書かれています。
全粒穀物がこれほど評価されるのは、豊富な食物繊維、ポリフェノール類などの抗酸化物質やミネラルなど、多彩な栄養素をまんべんなく摂取でき、主食になりやすい食品ゆえ定期的に自然と摂取できるからと言えます。
全粒穀物を大量に食べればいいということではなく、主食になりやすい穀物であることを活かしコンスタンスに摂取しながら、多彩な食材をバランス良く食生活に取り入れることが健康的な体つくりの第一歩なのです。